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フワフワ達との生活の中には思わぬ危険がいっぱいあります。
電化製品のコードを噛んでしまった。ゴミをあさって食べてしまった。
など気を付けていたつもりでもヒヤッとするような事故が起こることがあります。
今回は私たちの身近にある危険の中から「夏」に最も注意が必要なものをいくつかまとめてみました。

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「虫よけのキケン」

どこの家庭でも何気なく使われている電気式の蚊取り器(ノーマットなど)や渦巻き線香ですがそれって本当に安全なのでしょうか?

TVのCMなどで宣伝されているような、有名な殺虫剤によく使われている殺虫成分の多くは「ピレスロイド系」です。
ピレスロイドは昆虫類・両生類・爬虫類に対して神経系の毒性を有するもので哺乳類・鳥類に対する影響は弱く安全性が高いとされているのですが…
医療者むけの文書にはピレスロイド剤の毒性としてヒト経口推定致死量が10g~100gと少量であることが記されているほか、ラットの実験の結果では無毒性とは記していません。
ラットは私たちやフワフワ達と同じ哺乳類です。
また、大量に吸入した場合は嘔吐・頭痛・下痢・めまい・顔面蒼白等の症状が現れることがあり、ひどい場合はアナフィラキシーショックを起こすこともあるということです。
電気式の蚊取り器を窓を閉め切った部屋で1時間程度使用すると田んぼや畑に漂う農薬よりも高濃度になることもあるそうです…。
これだけの身体への影響があって「安全」と言えるのでしょうか?

そして…昔ながらの渦巻き線香。
実は昔ながら…は見た目だけで、最近の蚊取り線香の材料に使われている成分は電気式の蚊取り器とほぼ同じ成分です(ちなみに吊るすタイプやスプレータイプもほぼ変わりません。)
やはりピレスロイド系成分を練りこんで作ったものがほとんどです。

今回はピレスロイド系の薬剤のお話をしましたがもう一つ「有機リン系」の殺虫剤も有名ですね。有機リン系の薬剤は農薬などに使われることが多いので、お散歩中に草を食べて死んでしまった…というような事故はほとんどがこの薬剤が原因となっているそうです。

大切な家族の為に…と思ってしていたことで私たちもフワフワたちも身体を蝕まれていたら悲しいですよね。

ではどんな虫よけを選んであげたらよいのでしょう。

植物原料だけで作られた蚊取り線香
オーガニックのお店やインターネットなどで、自然のもの、安全なものを購入することができます。

蚊帳を使う。
外で過ごしている子には犬小屋と生活スペースを大きな蚊帳で覆ってしまうというのもよいかもしれませんね。しかし蚊帳の中の気温が思いのほか高くなるということには十分注意が必要です。

庭に植える植物を虫よけ効果のある植物にする。
モスキートブロッカーやゼラニウムなどの虫が嫌がる匂いの植物を植えるというのもよいですね。※ただ、植物の中には犬が食べてしまうと中毒を起こしてしまうものもあります。事前によく下調べして選んであげましょう。

水のたまる場所をなくす。
蚊は水辺にたくさん発生します。空き缶、古タイヤなど、水のたまる場所ををできるだけ無くすことが、蚊を減らすことにつながります。
また、排水路の泥やヘドロを取り除き、流れをよくすることも有効です。

「保冷剤のキケン」

暑い夏を過ごすのに、忘れられないのが保冷効果の高い「アイスノン」や「アイスパック」。最近ではペット用のジェルマットもよく見かけるようになりました。
身体を直に冷やすことができ、電気代の節約にもなる優れものなのですが…実はこの固まらない保冷剤(※固まるものが全て安全というわけではありません)に含まれる「エチレングリコール」という成分がとっても危険なのです。
この「エチレングリコール」を誤って食べてしまって亡くなってしまうという事故が毎年起こっているのです。


獣医さんによって「エチレングリコール中毒」の危険性が詳しく書かれていますので、お読みください。(以下の記事は「動物病院診療日記」より転載しています。)

夏と言うのは言わずもがな、暑くてまいる季節です。
夏場に注意が必要なのは熱中症ですが、熱中症とは別に、暑い季節に気をつけないといけないこともあったりします。
そのひとつが「エチレングリコール中毒」というものです。

夏場に暑さ対策として重宝されるものに、「アイスパック」があります。

これはジェルの様なものを冷凍庫で冷やしておいて、それを首に巻いたり頭に巻いたりして、ひんやりさせて暑さをしのぐものです。

頭に巻くベルトタイプのものは、暑い時に頭に巻くとあたまがすっきりしますので、本を読んだりするときなどは僕もよく使っています。

ところで気をつけないといけないのは、頭に巻いているだけならもちろん何の問題はないのですが、かじったりしたときに、中に含まれている成分を口にすると、中毒を起こしてしまう可能性があるという事です。
(ワインに甘み成分として混入し、人が死ぬと言う事故は今も世界中で起こっているそうです)。

中身の成分が高分子ポリマーなどだけであれば問題はないと思われますが、怖いのは、「エチレングリコール」が成分として入っている場合です。

エチレングリコールは甘い味がするため、動物がかじって穴を開けた場合、中から出て来たものを喜んでぺろぺろと舐めてしまう可能性があります。
すると、エチレングリコール中毒になってしまう可能性があります。

エチレングリコールは肝臓で代謝され、グリコアルデヒドやグリコール酸エステル、シュウ酸エステルなどが産生されます。
時間とともにどの代謝産物が作られるかによって臨床症状が異なります。
(だから、熱中症かなと思ってみていたら、
 実はエチレングリコール中毒だったという事もあり得るのです)。

ステージ1は最初の30分から12時間で起こるもので、嘔吐、精神状態低下、神経症状、多飲多尿が見られます。

ステージ2は12~24時間で見られ、貧脈や呼吸速迫が起こります。

最終段階のステージ3は半日~一日以上たってからなるものですが、最終的に産生されたシュウ酸カルシウムによって腎臓がダメージを受け、腎不全になって高率で死亡します。

エチレングリコールが怖いのは、「なんかふらふらしているけど様子を見よう」と言っていると、あっという間に腎臓までやられてしまい、腎不全で死んでしまうという事です。

しかも、ステージが進んだ後で治療を始めても、もうすでに体の中ではシュウ酸カルシウムが作られてしまい、手遅れになってしまいます。

治療としては、早く連れて来てもらった場合は吐かせたり、胃洗浄を行ったりもしますが、もう体がエチレングリコールを吸収してしまっている場合は、「エタノールの静脈注射」が基本的な治療となって来ます。

これは、肝臓で「エチレングリコール→代謝→毒性物質」という変化が起こる前に、肝臓の同じ代謝回路でアルコールを代謝しないといけないようにさせ、エチレングリコールの代謝を競合阻害させようと言うものです。

エタノールを注射すれば、当然血中エタノール濃度が上がって体は酔っぱらうのですが、エチレングリコールが分解されてシュウ酸カルシウムが作られてしまえば、動物は死んでしまいますので、犬が酔っぱらった状態になってふらふらになろうが、そんな事は言っていられません。

問題は、エタノールの注射が間に合うか、ということです。
注射をしたとしても、時間が間に合わずにエチレングリコールが分解されて、毒性物質が作られてしまえば、それでもう"アウト"です。

また、エタノールを入れて競合させても、あまりに多くのエチレングリコールを体が吸収してしまっていれば、競合しきれず、毒性物質が作られてしまう可能性があります。

僕も以前、アイスノンを食べた犬を治療してところ、治療の甲斐なく死んでしまった事がありますが、他の獣医師と話をしていても、「症状が出て来たら、だいたい死んじゃうね」ということで、死亡率の高い、怖い中毒であるのは間違いないようです。

ポイントを抜粋しておくと、
身近にある中毒物質なのに、危険性を知らない人が多い
「パックを食べた」たという禀告がないと、診察してもまず分からない
毒性物質が出来てしまった後ではほぼ手遅れということです。

早い対処が必要なのに、症状が分かりづらく、気づいた後では手遅れになっている可能性があるのが怖い中毒です。

血液検査にしても、初期には腎臓の数値は高くありません。
シュウ酸カルシウムが作られて腎臓がダメージを受け始めると、しだいに腎臓の数値が上がって来るのですが、数値が上がって来る段階になったら、それはもうほぼ手遅れという事を意味しているのです。

一番有名なアイスパックというと「アイスノン」ですが、実はこれにもエチレングリコールは入っているため、かじって遊んでいたりすると、エチレングリコール中毒になって死亡してしまう可能性があります。

他にも、アイスパックで"食べてはいけない"と書いてあるものは、エチレングリコールを含んでいる可能性がありますので、家にアイスパックがある方は、一度、内容成分を確認しておいた方が良いと思います。

暑い季節は、動物用の暑さ対策としてアイスパックを下にしいてあげるという人も多いとは思いますが、かじって遊んでいるうちに、甘いので喜んで舐めていて、中毒となって死亡してしまうという可能性は十分すぎるほどありますので、「食べられません」と書いてあるアイスパックを、動物のところにおきっぱなしにするという事は止めておいた方が良いと思います。

日常の生活の中にも、実は危険というものは案外潜んでいるものですので、よかれと思って用意してあげたもので、思わぬ事故を起こさないようにご注意いただきたいと思います。

この記事は「動物病院診療日記」より転載しています。

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フワフワたちのなつのきけん小.pngいかがでしたか?
こんなに身近にたくさんの危険があることにびっくりしてしまいますよね。
大切な家族との楽しい毎日のために、どうか頭の片隅に入れておいてください。
今回の内容を参考にフワフワ達と楽しい夏を過ごしてください。


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