夏の危険3.png

夏はフワフワ達には1番厳しい季節ですね。
熱中症で亡くなってしまう事故は悲しいことに毎年起きているのです。
暑くても、体調が悪くても何も言えないこの子たちを守ってあげられるのは私たち家族です。
今回は「夏のキケン」と題して、熱中症をはじめ、水の事故、保冷剤での事故など、どこのお家でも起こってしまうかもしれない身の回りの夏のキケンについてをピックアップしてみました。

熱中症ポスターダウンロード

①熱中症のキケン
毎年夏になるとTVのニュースなどで必ず耳にする熱中症による「人」の死亡事故。
あまり報道されませんが、ペットの熱中症による死亡事故もやはり毎年起こっているのです。
ご存知の方も多いと思いますが、犬は汗をかいて体温を調節することがとっても苦手です。私たち人間が「ちょっと暑いな」ぐらいに感じる暑さでも、あっというまに体温が上昇してしまうこともあります。
また、犬の平熱は、小型犬で38.6℃~39.2℃大型犬で37.5℃~38.6℃と、私たちより少し高めなので、危険とされる41℃までとの差が小さいためすぐに危険な状態になってしまうのです。
では、大切な家族を熱中症から守るためにはどうしたら良いのでしょう。
まずは部屋の中で出来る対策から考えていきましょう。

「部屋の中での対策」

湿度や気温の高い日は、家の中でも熱中症になることがあります。
以下の対策を参考に、十分注意してあげましょう。

部屋には温度、湿度計を置いて出来るだけ快適な温度、湿度にしてあげましょう。
犬にとっての快適な気温は犬種にもよりますが、23℃~25℃湿度50%と言われています。
※しかし1年中一定の気温で過ごしていると、季節の感覚が無くなってしまい冬に毛が抜けてしまったり、夏にモコモコになってしまったりと体の機能がずれてしまうこともあります。安全な範囲で「暑い」「寒い」も体験させてあげましょう。

窓からの日差しを遮る工夫をする。
断熱シートなどを窓にはめたり、窓の外に日よけをするなど。

クールボードを敷いてあげる。
ジェルマットなどを使用する場合は使用されている成分などに十分注意し、誤飲してしまわないようよく見ていてあげましょう。

新鮮なお水をいつでも飲めるようにしてあげましょう。
夏場は特にお水なども傷みやすいので、まめに器をきれいにして新鮮なお水を用意してあげましょう。

お留守番のときは予備対策を。
落雷や停電でエアコンが切れてしまったときのために、涼しい場所(※北側の部屋や玄関など)へ移動できるようにしておいてあげるとよいでしょう。お水も何ヵ所かに置いてあげましょう。また、長時間のお留守番のときは家族や近所のお友達ペットシッターなどに様子を見に行ってもらうなどの対策を考えましょう!
※お留守番の部屋が南側や西側の場合は特に注意が必要です!

2013-10-12-15-47-38_deco.jpg

2013-10-12-15-53-55_deco.jpg

「室外で過ごしている場合の対策」

日本の夏の平均気温は昔と比べると少し高いようです。
化学物質や大気汚染の影響でスモッグ注意報も頻繁にだされています。
暑さもすこし変わってきたのかもしれません。
昔から外で暮らしているから大丈夫…とは限りません。
しっかりと暑さ対策をしてあげましょう。

犬小屋を日陰の風通しの良い場所など出来るだけ涼しい場所へ移動してあげる。
犬が過ごす場所はアスファルトよりも土の方が良いです。実際に触って比べてみてください。

犬小屋を高床式にして下からの熱を減らす。
ブロックや木材などを使って地面と小屋との間に隙間を作ってあげましょう。
隙間に凍らせたペットボトルなどを敷き詰めてあげるのもよいですね。
※ペットボトルを噛み噛みしてしまう場合は危険ですので使用しないでください。

気温や湿度が高い日は玄関など日の当たらない涼しい所に避難させる。
気温が30度を超すような日や湿度の高い日など、日陰に居ても暑さを感じるような日は風通しの良い玄関やエアコンが効いた廊下などに避難させてあげましょう。

ブラッシングやシャンプーで身体を綺麗にして毛の間にしっかりと風が通るようにしてあげましょう。
身体が汚れていたり、冬毛が抜けきれていないと、さらに熱がこもりやすくなります。
定期的にシャンプーやブラッシングをしてあげましょう。

お水に氷を入れてあげる。
お腹が冷えすぎないように気を付けましょう。
また、氷を怖がってお水を飲めなくなってしまう子もいるので、しっかり確認してあげましょう。

「おでかけの時の対策」

夏のお出かけには特に注意が必要です。
「ちょっとなら…」「これくらいの暑さなら・・・」
取り返しのつかない事故につながってしまいます。
私たちの判断がこの子たちの全てであるということを
いつも心がけましょう。


どんなに短い時間でも、絶対に車においていかない。
やむをえずトイレなどに寄る時は安全で日陰の涼しい所につないで、水を用意し待っていてもらう。雨や雷で車外に下ろせない時は、スペアキーをかならず持ち歩き、エアコンをつけたまま窓を開け(飛び出さない範囲で)、店員さんに声をかけて可能であれば様子を見ていてもらいましょう。

こまめに水をあげましょう。
ただし、運動前や運動中、運動直後のお水のがぶ飲みは遺捻転を引き起こしかねません。十分に注意してください。

炎天下、湿度の高いところでの激しい運動は絶対に避けましょう。
ほんの数分の運動だったとしても、その子の体質や体型、年齢や体調によっては取り返しのつかないような事態になってしまうこともあります。私たち人間の暑さの基準で判断しないようにしましょう。

海などの日陰のない場所には絶対に連れて行かない。
海の近くに住んでいて、早朝のお散歩に…というのであれば別ですが、体温調節の苦手なこの子たちにとって、夏の海水浴は本当に危険です。
遠くへ行かなくても、お出かけしなくても、一緒に出来る楽しみはいっぱいあるはず(*^_^*)
この子たちが笑ってくれる時間の使い方ってどんなことかな?って探してみるのもいいかもしれませんね。

クーラーBOXに保冷剤や氷、冷やしたタオル、冷やしたTシャツなどのアイテムを用意する。
ふわふわ用クーラーBOXをいつも車に準備しておくことを習慣にするとよいですね。

2013-10-12-15-54-26_deco.jpg

2013-10-12-15-55-58_deco.jpg

「お散歩の時の対策」

日中のお散歩は絶対に避ける!
明け方の涼しい時間、日が沈んで気温が下がってきてからが鉄則ですね。

アスファルトが暑くないか手のひらをしばらくつけて確認しましょう。
夏場のアスファルトは時に80℃になることもあるそうです。裸足であるいたらもちろん火傷してしまいます。

いつでもお水が飲めるように持って行く。
冷蔵庫で冷やしておくといいですね。

できるだけ日陰を歩きましょう。
夏場は日が昇る前や暮れてからの暗い時間のお散歩が多くなります。除草剤の撒かれた草やゴミなどを食べてしまわないように十分に気を付けてあげましょう。

ブラッシングやシャンプーで身体を綺麗にして毛の間にしっかりと風が通
 るようにしてあげましょう。
身体が汚れていたり、冬毛が抜けきれていないと、さらに熱がこもりやすくなります。定期的にシャンプーやブラッシングをしてあげましょう。


お水に氷を入れてあげる。
お腹が冷えすぎないように気を付けましょう。また、氷を怖がってお水を飲めなくなってしまう子もいるので、しっかり確認してあげましょう。

どの対策も決して難しいものではありません。熱中症は、私たちのちょっとした注意で防げる病気です。
今年も夏はやってきます!予防対策をしっかりとして、かわいい家族との楽しい夏を過ごしてください。


②水辺での危険

みなさん「犬」はみんな泳ぎが得意だと思っていませんか?
実はそんなことはないのです。
もちろん最初から上手に泳げる子もいますがばしゃばしゃするだけで全然泳げない子もいます。
また泳ぎの得意な子が溺れてしまうこともあります。
では川や海やプールで遊ぶとき、どんなことに気を付けたらよいのでしょうか。

「川遊びでの注意」

楽しい所に連れて行ってもらった時のふわふわ達の行動は子どもと変わりません。
はしゃぎ過ぎて言うことを聞かなかったり、お友達がやっていることをまねしようと無茶をしたり…。特に「犬は痛みに強い」のでケガをしていても我慢してしまうことがあります。よく見ていてあげましょう。


流れの速いところでは遊ばない。
1度流れに飲み込まれてしまうとそこから抜け出すことは容易ではありません。
助けに行って一緒に流されてしまうという危険もあります。安全性を高めるためにライフジャケットを着せてあげるのもよいですね。

釣り針などでけがをしないように注意してあげましょう。
釣り針は一度刺さってしまうと抜けにくい構造になっているのでとても危険です。

岩場は苔などですべりやすいので気を付けましょう。
足を滑らせて骨折してしまうこともあります。十分に注意していてあげましょう。

首輪やリードは着脱が簡単に出来るものにしましょう。
水中で岩や木の枝などに引っかかってしまい、身動きが取れなくなってしまうことがあります。目の行き届かない所や、私たちが入れないような場所では遊ばせないようにしましょう。

まめに休憩をとりましょう
楽しくて身体が疲れていることに気付かずに急に溺れてしまったり、身体が冷えきってしまったりすることがあります。遊ぶ時間を決めてあげたり、様子を見て疲れているようであれば必ず休憩をしましょう。

水質に気を付けましょう。
私たちが入りたくないなと思うような場所ではもちろん遊ばせないでください。犬は水遊びの時たくさん川の水を飲んでしまいます。薬品や化学物質などで汚染されていることもあるかもしれません。事前にインターネットで情報を得たり、市区町村に問い合わせてみるのも良いですね。

遊んだあとは必ずシャンプーをしましょう。
どんなにきれいな場所でも、細菌や有害な物質が全くないとは言い切れません。砂や砂利が被毛の中に入り込んでいたり、肉球や指の間に挟まっていたりして皮膚のトラブルにつながることもあります。その場にシャンプーのできる設備が整っていれば便利ですが、ほとんどの場合はありませんので、ひとまずその場で少しでも汚れを流せるようにタンクなどに水を入れていくとよいでしょう。
水道を貸してくれるところもあるのでシャワーヘッド付きのホースを常備しておくととっても便利です。

2014-05-06-12-11-01_deco.jpg

2013-10-12-15-55-01_deco.jpg

「プールでの注意」

最近ではドッグプールを併設しているランも増えてきました。
犬がたくさん集まる所ではいつも以上に色んなことに注意しましょう。

プールに入る前に十分に水を浴びましょう。
犬が水を飲んでしまうことを考慮して塩素を使用していないプールもあります。
体に付いた汚れやばい菌を持ち込まないように入口に用意されたシャワーなどでよく流しましょう。また、冷たいプールにいきなり入るのは心臓へ負担がかかります。これは人と同じですね。少しずつ身体を水温に慣らしてあげるためにもしっかりと水浴びをしましょう。

滑って転んでケガをしないように気を付けましょう。
プールサイドはとっても滑りやすいので、走り回ったりじゃれあっていると大けがをすることがあります。興奮しすぎてしまったら、一度日陰でクールダウンするとよいでしょう。また水で軟らかくなった爪や肉球がプールサイドで走り回っているうちに削られてしまい、出血してしまうこともあります。こまめにチェックしてあげましょう。

おもちゃの取り合いでケンカになってしまうことがあります。
新しいおもちゃがあったら気になってしまう子も多いはずです。取り合いになってしまったり壊してしまうこともあるかもしれません。ケンカになってしまう場合はおもちゃは片づけてしまいましょう。また、同じおもちゃを持ってくる子も多いので名前を書いておくとよいでしょう。

必ず休憩をとりましょう。
泳ぎっぱなしの子は自分でも疲れていることに気が付きません。ケガや体調を崩してしまう原因になってしまうこともあるので必ず休憩をとりましょう。

「海での注意」

海水浴場は、シーズンになるとペット同伴禁止になる場所もあります。
事前によく確認しておくことも大切ですね。

日中の海辺には絶対に連れて行かないようにしましょう。
海水浴シーズンの海辺は砂浜の照り返しで気温は高く、砂の上は足をついたとたんに火傷をしてしまいます。また海水浴に来た人たちが捨てたごみを誤飲してしまったり割れた瓶などでケガをしてしまうこともあります。

天気に注意しましょう。
波が高かったり、潮の流れが速いところでは遊ばないようにしましょう。
レトリーブの好きな子は遠くまで飛んで行ってしまったおもちゃを必死に探しに行きます。潮に流されて泳いでも泳いでも戻って来られなくなり、力尽きてしまうことも十分にあります。水辺での安全性を高めるためにライフジャケットをきせてあげるのもよいですね。

遊泳禁止区域には絶対に入らないでください。
(他の観光客の迷惑にならないように…と人のいない場所を選んで遊ぶことも多いでしょうが、遊泳が禁止されている場所には渦潮が起きていたり、危険な生物が生息していたりすることもあります。絶対に入らないでください。)

海水を飲んで吐いてしまうことがあります。
遊びに夢中になっているうちに海水をガブガブしてしまい吐いたり下痢をしてしまう子がいます。
その場合は十分に身体を休ませて新鮮なお水を飲ませてあげましょう。あまり症状がひどい時は熱中症などの別の原因も考えられるので病院へ連れて行きましょう。

泳いだ後は必ずシャンプーをしましょう。
海水に含まれる塩分や砂が皮膚のトラブルにつながることがあります。
また細菌感染を防ぐためや有害な物質を落とすためにもシャンプーは欠かせません。すぐにシャンプーが出来ない場合は、その場で少しでも汚れを流せるようにタンクなどに水を入れていくとよいでしょう。また、シャンプーはできなくても水道を貸してくれるところもあるのでシャワーヘッド付きのホースを常備しておくと、とっても便利です。

クラゲに注意しましょう。
シーズンがずれるとクラゲなどが大量発生します。犬も刺される事があるので、十分に注意してください。

2014-05-07-11-56-23_deco.jpg

③身近なモノの危険

フワフワ達との生活の中には思わぬ危険がいっぱいあります。
電化製品のコードを噛んでしまった。ゴミをあさって食べてしまった。
など気を付けていたつもりでもヒヤッとするような事故が起こることがあります。
今回は私たちの身近にある危険の中から「夏」に最も注意が必要なものをいくつかまとめてみました。

2014-05-06-12-15-05_deco.jpg

「虫よけのキケン」

どこの家庭でも何気なく使われている電気式の蚊取り器(ノーマットなど)や渦巻き線香ですがそれって本当に安全なのでしょうか?

TVのCMなどで宣伝されているような、有名な殺虫剤によく使われている殺虫成分の多くは「ピレスロイド系」です。
ピレスロイドは昆虫類・両生類・爬虫類に対して神経系の毒性を有するもので哺乳類・鳥類に対する影響は弱く安全性が高いとされているのですが…
医療者むけの文書にはピレスロイド剤の毒性としてヒト経口推定致死量が10g~100gと少量であることが記されているほか、ラットの実験の結果では無毒性とは記していません。
ラットは私たちやフワフワ達と同じ哺乳類です。
また、大量に吸入した場合は嘔吐・頭痛・下痢・めまい・顔面蒼白等の症状が現れることがあり、ひどい場合はアナフィラキシーショックを起こすこともあるということです。
電気式の蚊取り器を窓を閉め切った部屋で1時間程度使用すると田んぼや畑に漂う農薬よりも高濃度になることもあるそうです…。
これだけの身体への影響があって「安全」と言えるのでしょうか?

そして…昔ながらの渦巻き線香。
実は昔ながら…は見た目だけで、最近の蚊取り線香の材料に使われている成分は電気式の蚊取り器とほぼ同じ成分です(ちなみに吊るすタイプやスプレータイプもほぼ変わりません。)
やはりピレスロイド系成分を練りこんで作ったものがほとんどです。

今回はピレスロイド系の薬剤のお話をしましたがもう一つ「有機リン系」の殺虫剤も有名ですね。有機リン系の薬剤は農薬などに使われることが多いので、お散歩中に草を食べて死んでしまった…というような事故はほとんどがこの薬剤が原因となっているそうです。

大切な家族の為に…と思ってしていたことで私たちもフワフワたちも身体を蝕まれていたら悲しいですよね。

ではどんな虫よけを選んであげたらよいのでしょう。

植物原料だけで作られた蚊取り線香
オーガニックのお店やインターネットなどで、自然のもの、安全なものを購入することができます。

蚊帳を使う。
外で過ごしている子には犬小屋と生活スペースを大きな蚊帳で覆ってしまうというのもよいかもしれませんね。しかし蚊帳の中の気温が思いのほか高くなるということには十分注意が必要です。

庭に植える植物を虫よけ効果のある植物にする。
モスキートブロッカーやゼラニウムなどの虫が嫌がる匂いの植物を植えるというのもよいですね。※ただ、植物の中には犬が食べてしまうと中毒を起こしてしまうものもあります。事前によく下調べして選んであげましょう。

水のたまる場所をなくす。
蚊は水辺にたくさん発生します。空き缶、古タイヤなど、水のたまる場所ををできるだけ無くすことが、蚊を減らすことにつながります。
また、排水路の泥やヘドロを取り除き、流れをよくすることも有効です。

「保冷剤のキケン」

暑い夏を過ごすのに、忘れられないのが保冷効果の高い「アイスノン」や「アイスパック」。最近ではペット用のジェルマットもよく見かけるようになりました。
身体を直に冷やすことができ、電気代の節約にもなる優れものなのですが…実はこの固まらない保冷剤(※固まるものが全て安全というわけではありません)に含まれる「エチレングリコール」という成分がとっても危険なのです。
この「エチレングリコール」を誤って食べてしまって亡くなってしまうという事故が毎年起こっているのです。


獣医さんによって「エチレングリコール中毒」の危険性が詳しく書かれていますので、お読みください。(以下の記事は「動物病院診療日記」より転載しています。)

夏と言うのは言わずもがな、暑くてまいる季節です。
夏場に注意が必要なのは熱中症ですが、熱中症とは別に、暑い季節に気をつけないといけないこともあったりします。
そのひとつが「エチレングリコール中毒」というものです。

夏場に暑さ対策として重宝されるものに、「アイスパック」があります。

これはジェルの様なものを冷凍庫で冷やしておいて、それを首に巻いたり頭に巻いたりして、ひんやりさせて暑さをしのぐものです。

頭に巻くベルトタイプのものは、暑い時に頭に巻くとあたまがすっきりしますので、本を読んだりするときなどは僕もよく使っています。

ところで気をつけないといけないのは、頭に巻いているだけならもちろん何の問題はないのですが、かじったりしたときに、中に含まれている成分を口にすると、中毒を起こしてしまう可能性があるという事です。
(ワインに甘み成分として混入し、人が死ぬと言う事故は今も世界中で起こっているそうです)。

中身の成分が高分子ポリマーなどだけであれば問題はないと思われますが、怖いのは、「エチレングリコール」が成分として入っている場合です。

エチレングリコールは甘い味がするため、動物がかじって穴を開けた場合、中から出て来たものを喜んでぺろぺろと舐めてしまう可能性があります。
すると、エチレングリコール中毒になってしまう可能性があります。

エチレングリコールは肝臓で代謝され、グリコアルデヒドやグリコール酸エステル、シュウ酸エステルなどが産生されます。
時間とともにどの代謝産物が作られるかによって臨床症状が異なります。
(だから、熱中症かなと思ってみていたら、
 実はエチレングリコール中毒だったという事もあり得るのです)。

ステージ1は最初の30分から12時間で起こるもので、嘔吐、精神状態低下、神経症状、多飲多尿が見られます。

ステージ2は12~24時間で見られ、貧脈や呼吸速迫が起こります。

最終段階のステージ3は半日~一日以上たってからなるものですが、最終的に産生されたシュウ酸カルシウムによって腎臓がダメージを受け、腎不全になって高率で死亡します。

エチレングリコールが怖いのは、「なんかふらふらしているけど様子を見よう」と言っていると、あっという間に腎臓までやられてしまい、腎不全で死んでしまうという事です。

しかも、ステージが進んだ後で治療を始めても、もうすでに体の中ではシュウ酸カルシウムが作られてしまい、手遅れになってしまいます。

治療としては、早く連れて来てもらった場合は吐かせたり、胃洗浄を行ったりもしますが、もう体がエチレングリコールを吸収してしまっている場合は、「エタノールの静脈注射」が基本的な治療となって来ます。

これは、肝臓で「エチレングリコール→代謝→毒性物質」という変化が起こる前に、肝臓の同じ代謝回路でアルコールを代謝しないといけないようにさせ、エチレングリコールの代謝を競合阻害させようと言うものです。

エタノールを注射すれば、当然血中エタノール濃度が上がって体は酔っぱらうのですが、エチレングリコールが分解されてシュウ酸カルシウムが作られてしまえば、動物は死んでしまいますので、犬が酔っぱらった状態になってふらふらになろうが、そんな事は言っていられません。

問題は、エタノールの注射が間に合うか、ということです。
注射をしたとしても、時間が間に合わずにエチレングリコールが分解されて、毒性物質が作られてしまえば、それでもう"アウト"です。

また、エタノールを入れて競合させても、あまりに多くのエチレングリコールを体が吸収してしまっていれば、競合しきれず、毒性物質が作られてしまう可能性があります。

僕も以前、アイスノンを食べた犬を治療してところ、治療の甲斐なく死んでしまった事がありますが、他の獣医師と話をしていても、「症状が出て来たら、だいたい死んじゃうね」ということで、死亡率の高い、怖い中毒であるのは間違いないようです。

ポイントを抜粋しておくと、
身近にある中毒物質なのに、危険性を知らない人が多い
「パックを食べた」たという禀告がないと、診察してもまず分からない
毒性物質が出来てしまった後ではほぼ手遅れということです。

早い対処が必要なのに、症状が分かりづらく、気づいた後では手遅れになっている可能性があるのが怖い中毒です。

血液検査にしても、初期には腎臓の数値は高くありません。
シュウ酸カルシウムが作られて腎臓がダメージを受け始めると、しだいに腎臓の数値が上がって来るのですが、数値が上がって来る段階になったら、それはもうほぼ手遅れという事を意味しているのです。

一番有名なアイスパックというと「アイスノン」ですが、実はこれにもエチレングリコールは入っているため、かじって遊んでいたりすると、エチレングリコール中毒になって死亡してしまう可能性があります。

他にも、アイスパックで"食べてはいけない"と書いてあるものは、エチレングリコールを含んでいる可能性がありますので、家にアイスパックがある方は、一度、内容成分を確認しておいた方が良いと思います。

暑い季節は、動物用の暑さ対策としてアイスパックを下にしいてあげるという人も多いとは思いますが、かじって遊んでいるうちに、甘いので喜んで舐めていて、中毒となって死亡してしまうという可能性は十分すぎるほどありますので、「食べられません」と書いてあるアイスパックを、動物のところにおきっぱなしにするという事は止めておいた方が良いと思います。

日常の生活の中にも、実は危険というものは案外潜んでいるものですので、よかれと思って用意してあげたもので、思わぬ事故を起こさないようにご注意いただきたいと思います。

この記事は「動物病院診療日記」より転載しています。

2014-05-06-12-14-02_deco.jpg

夏の危険3.pngいかがでしたか?
こんなに身近にたくさんの危険があることにびっくりしてしまいますよね。
大切な家族との楽しい毎日のために、どうか頭の片隅に入れておいてください。
今回の内容を参考にフワフワ達と楽しい夏を過ごしてください。


home.png